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がんばる商店街30選とは?/what's

発酵力豊かな酒米が育む 老舗酒蔵の元気な美味さ

人気のスペアリブは、地産地消の味をしっかり染み込ませる。
自ら訪ねて、生産者と言葉を交わし、その姿から食材に秘められた味を汲み取る。
期待以上の発見と料理に向かう指針を示してくれる幸福な出会いもそこにある。
料理が「美味い!」と評判になる、背景には、生産者の見えない苦労があるのだ。
養豚家と洋食料理人が生み出したスペアリブも、そのひとつ。
料理人と生産者の姿を見ていると、味は、愛情と優しさだと、つくづく思う。

弓野 由佳[弓野畜産]
西野 貴文[アニマート]

 人はよく、「美味い!」という言葉を発するものだが、西野貴文さんが「弓豚」を初めて口にしたときの言葉は、「何、これ?!」だった。
 「お客さんも、そういう感想を漏らす人が多いですよ。そこで、すかさず、弓豚ってね…≠ニ話を始めることになるんです」。
 自店「アニマート」で、仕込みに笠間市の磯蔵酒造「稲里 辛口」、ひたちなか市の黒澤醤油店の醤油を使用し、茨城県産尽くしの豚肉料理を創った。美味い料理は、止められない、止まらない。西野さんは「やみつきスペアリブ」と名付けた。今では看板メニューとなっている。
 弓豚は、石岡市のブランド豚肉。この地で畜産農家を営む弓野知則さん・浩作さん兄弟の養豚肉である。西野さんが弓野畜産に初めて足を運んだのは、震災の年、今から四年前のことである。震災後、地域の絆が再認識されるなかで、食の世界でも、地元の食材を使おうという動きが活発になった。西野さんもそのひとり。「いいお肉」を県内くまなく探して、たどりついたのが弓豚だった。
 「食材を使うとき、極力、作っている方と話をするようにしているんです。どんな考えをもって作られているのか。その気持ちや考えを知らないと料理に説得力がないんですよ」
 弓野さんの豚舎を訪ねて、「ここだ」と思ったという。
 弓豚は、SPFポークという、豚がかかりやすい病気の原因を持たないよう、徹底した飼育コントロールのもとで管理、育成されている。夫の浩作さんとともに家業を切り盛りする由佳さんいわく、「業者の方々にも、他とは比べ物にならないくらい肉色が綺麗だと言われます」。
 自分の家より、豚舎を掃除しているときのほうが多いと笑みで語る。豚ヘの愛情がにじむ笑顔だ。
 豚舎は、畑地を改良して、地ならし、基礎杭打ち、鉄骨組み上げ、そして屋根葺きまで、あらゆる工作を弓野さんたちは自前で作り上げた。「豚とともに生きる」生産者の姿に、西野さんの「ここだ」という決断は起因する。その姿を、店主は「やみつきスペアリブ」で客に伝え続ける。

産地と街が出会うとき


お話をうかがってみると、まるで家族。
子を育てているような感覚で養豚をしている。
人を扱うのと変わらない飼育をしているんだもの、
美味いのに決まっているじゃないか、弓豚さん。
 関東平野のほぼ中心に位置し、古くから筑波山系の豊かな水の恵みを受け、さまざまな農産物が栽培される石岡の地は、昔から畜産がさかんな地域でもある。弓野畜産は、「安全で安心できる美味しい豚の育成には、環境づくりが基本」と言う。豚にストレスを与えない、衛生的でのんびりとできる環境の確保が大切だ。いいものを食べさせると、豚も病気をしない。病気になって薬漬けになってしまうと、肉にも影響が出る。薬は極力使わず、餌の質も落とさない。だから、養豚のリーダーたる弓野家の人たちは口をそろえて、こう言う、「うちでは、人間よりも豚のほうが偉い」と。生き物への深い愛情が素地にある。
 弓野さんの養豚業は父の代から。地域特産の梨づくりから養豚専業に転じた父・多喜男さんの、豚に対する愛情は並大抵ではなかった。
 「産まれたての豚って、抱きしめたくなるほど可愛いくてね」??。
 豚舎はおろか、庭先にまで豚がわんさといて、豚に親しみ、それぞれの個性も見分けるような家庭だったという。豚の鳴き声とともに長男・知則さん、二歳下の次男・浩作さんも育ち、豚は幼少時から遊び仲間のような存在だった。
 豚たちの幸せを願い、優しくあらんと育成する弓野家の姿には脱帽するばかりだ。
 「肉質は柔らかく、締まりがあって、きめ細かい。ほどよい甘みも兼ね備えている。脂の溶ける温度は低く、熱の入りが早い。脂身にまたコクがあって、とろけるような風味」…弓豚への評価はバツグンだ。
 味にうるさい消費者や、競争相手の業界から、こうした評価の高い豚肉を育て上げてきた弓野さんたちにとって、豚は商品である以上に、仲間であり、家族でもある。
 石岡市の「ふるさと納税」では、市の特産品として全国発送している。人気第一位の特産品として街の育成、知名度アップにまで貢献している。「育てて出荷する」までが養豚の仕事なのかもしれないが、「扱っているのは、どこのお店か」を伝え、弓豚を通じて、生産者も店も潤い、活気づくように、と願う。そこに、弓野さんたちの真の偉大さを感じる。

救民妙食 vol.02