イズムウェブサイトは、茨城県水戸市泉町から発信する街のポータルサイトです。水戸の商店街、文化、歴史、イベント情報を世界に向けて発信します。

救民妙食

産地と街が出会う

健康でありたいと、だれもが願う。食の安全も、しかり。
でも、豊かな時代ゆえに、何を食べていいのかわからない。
困ったときは、故事にならい、まずは、土地のもの、旬のものを。
健康の基本は、地産地消からといっても過言ではない。

圷 一博[あくつ農園代表]
岩間 賢太郎[岩間東華堂薬局 黄金東華十六代目]

岩間:泉町で「ファーマーズ・マーケット@水戸」に参加されるようになって、どのくらいになりますか。
圷:かれこれ、三年です。最初は赤で当然と思いながら、出させていただいたんですよ。「こんなところに野菜を売っているところがあるんだね」という感じで。だんだん常連のお客さんも来られるようになって、やっと根づいて来たなという感じです。
岩間:ひとりの消費者として見たときに、八百屋さんの名残りを感じますね。自分で作った作物を売る。顔が見える。作り手と買い物をする人の本来の関係が蘇ったようです。野菜だと、時期によってはたいへんですか。
圷:年間で三〇品目くらいですね。時期によっては五品目か六品目くらいに縮小してしまいますが、自分で作っているものが主なので、自分で味の評価ができるものを置かせてもらえるのは、作り手としては嬉しいです。鉾田の野菜を知ってもらう機会でもありますからね。
岩間:土と食材は、建物が立ち並ぶ、コンクリートを敷き詰めた街中でも、人の生活や健康の土台だと思います。一番大事なところ。地産地消、旬産旬食と呼びかけていますが、水戸にはかつて光圀公が推奨した「救民妙薬」の精神がありますから、そういう地域の伝統を受け継ぐなかで、街の活性化を図りたいものです。食の安全と健康は、だれでも願うことですから。
圷:節のときに節のモノを食べる。どんなにいいものであっても、時期以外のときに食べるのは、基本的に健康にはよろしくない。今は流通が発達しすぎて、その時期に本来ない農作物が非常に増えました。
岩間:本当にそうだと思います。そうした知識を消費者や料理にたずさわる方々に提供していくのが、われわれのような者の役目かもしれませんね。同じように風土病という病もあります。その土地にありがちな特定の病気。それに対して薬膳があります。「救民妙薬」などにうまくまとめられていますが、上手に活用していくと「くすり」になるわけです。その土地で収穫されたものを、旬の時期に食べることは、健康の妙薬ですね。

産地と街が出会うとき


野菜を作る生産者は、現場の姿を見てほしいと願う。
消費者にもっと生きた野菜を知ってほしい。
その願いが、いい作物、健康な食生活作りの励みになるのだ。
 私の畑は、鉾田市にあります。戦後、祖父の代からずっと農家です。代々開拓してきた土地で、子どもの頃から遊び場は畑でした。家業を継ぐのも自然なことで、現在、親父たち世代二人と私をメインに、パートさんと研修生などで仕事をしています。幸い、大学時代や就農後に学ぶ機会に恵まれ、タイからネパールを回りインドで酪農研修に参加したり、米国や欧州で研修した経験は、外の世界を広く見る上で、今の仕事の財産になっています。
 地産地消とともに、昨今、食の世界で「食育」なども見直されています。街で育った、私と同じ四〇代の世代は、「田舎を持たない人」と言われます。農地を見たことが無い、実際に土に触れたことが無い人たちは少なくありません。「野菜」といえば、「キレイ」な商品であるのがあたりまえ。畑で採れたふぞろいの作物から形のいいものだけが選ばれているのは、知ってはいても、いざ傷んでいる野菜を見ると、「どうしてこれが商品なの?!」と受け入れられない現実があります。
 化学肥料などの影響で土地が痩せ細った時代がこの地域でもありました。栽培される野菜は力を失い、結果、栄養を摂りたいなら、食べ物からではなく、ある種のサプリメントに頼る時代です。生産者にとっては、こんな哀しいことはありません。
 「この食材の産地は…」「この野菜の旬は…」と言われても、食べる人の胸にそれがどれだけ根づくものなのか、わかりません。意識付けには、もう一歩踏み込んだ取り組みが必要だろうと思っています。農場菜園や家庭菜園ではない、ありのままの現場を見てもらえるような農園づくりを夢見ています。  農家民宿のようなかたちで、泊まりで遊びに来ながら、自分たちの農場区画を自分たちで耕す…。生産者も、ただ野菜を作っていればいいという時代ではありません。本来の食のありかたを模索するとき、消費者ともっと自由に行き来できる関係が築ければと思いながら、畑と向き合っています。(圷 一博)

救民妙食 vol.02